大人のADHD(注意欠如多動性障害)
(続)
ADHDとASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)の併存
以前の診断基準では、ADHDとPDD(広汎性発達障害、自閉症スペクトラムの旧診断名)のどちらの特徴もある場合は、PDDの診断を優先していました。つまりADHDとPDD両方の診断を受けることはありませんでした。しかし2013年にアメリカ精神医学会から発表されたDSM-5という診断基準から、ADHDとASDの併存も可能と変更になりました。日々大人の発達障害の方の支援に当たっている者としてはこの変更は実感に合っていると感じます。ADHDとASDどちらの特徴も持っている人は少なくない。
自閉症スペクトラム(ASD)・アスペルガー症候群(AS)の特徴は、
①空気が読めない
②コミュニケーションが苦手
③こだわり
があるという、いわゆる「3つ組の障害」と言われるものに集約されます。これまでにお伝えしてきたADHDの特徴である①頭の多動②衝動・突発③ミス・抜け漏れの多さとは大きく異なると思われるかもしれません。
ただし実際には専門家でも「衝動的に行動している(ADHD的)」のか「社会性の難しさから空気を読んでいない(ASD的)」のかどちらか判断がつきづらかったり、「過度に集中している(ADHD的)」のか「こだわりから作業を続けている(ASD的)」のか判別しづらいことがあります。そのため当社では診断名にこだわらずに、個別にアセスメントし具体的な支援方法を検討するようにしています。
【参考】専門家でも難しいADHDとASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)の違い
ADHD(注意欠如多動性障害)の診断基準・処方薬
ADHDの診断までの流れ
ADHDの診断ができるのは医師だけです。診断を受けたいと思ったら、精神科や心療内科に通院する必要があります。発達障害を診ることができる医療機関はまだまだ多いとは言えませんので、お住まいの自治体の障害福祉課や発達障害者支援センターなどで発達障害に詳しい医療機関の情報を集めた上で通院先を選ぶことをお勧めします。
診察は1回あたり15~20分程度が一般的です。初診の時は生育歴の聞き取りなどで長めに時間を取ることもあります。前回の診察からの間にどんなことがあったか、体調はどうだったか、お薬の効き具合はどうだったかなどの医師の問診を受けます。診察の他にASRSという自己記入式症状チェックリストを実施したり、臨床心理士とWAIS(ウェクスラー知能検査)-Ⅲという成人用の知能検査を行うことがあります。知能検査では全検査IQ(一般的に”IQ”と言う時はこちらを使います)の他に、言語性IQや動作性IQ、さらに細かい能力を計測する群指数などが算出されます。それによってどのような能力の凸凹があるか確認することができます。ADHDの場合は作動記憶(ワーキングメモリー)や処理速度といった動作性の群指数の凸凹を確認することが多いようです。
通院頻度は月1、2回から週に1回など、現在の症状によって個人差はあります。半年以上通院を続け、ADHDの症状が継続して現れていることが確認できると、診断を受けることができます。周囲から見て症状があまりわからないタイプの人は「ADHDの傾向がある」という言い方で医師から伝えられることも多いですが、そのような人も困り感が強ければもちろん支援を受ける必要がありますので、必要な支援を受けるのに確定診断が必要な場合は、主治医にご相談いただければと思います。
ADHDの診断基準
最新の診断基準(アメリカ精神医学会 DSM-5)では、不注意や多動/衝動性が持続して現れ、その結果社会的または仕事・学業上に影響がある場合にADHDと診断するとしています。
■不注意: 以下のうち6つ(17歳以上の場合は5つ)以上に当てはまり、少なくとも6ヶ月以上持続している。
* 細かい注意を払うことができない。不注意から失敗することがよくある。
* 注意を持続しつづけることが難しい。
* 話しかけられても聞いていないように見える。
* 指示されたことをやり遂げることができない。
* 順序立てて課題を進めることが難しい。
* 継続して課題に取り組むことが難しい。
* よく必要なものをなくす。
* よく関係ないことで気が散る。
* 忘れる・抜け漏れることがある。
■多動/衝動性: 以下のうち6つ(17歳以上の場合は5つ)以上に当てはまり、少なくとも6ヶ月以上持続している。
* そわそわと手足を動かしたり座っていてももじもじ動いてしまう。
* 着席しつづけるのが難しく離席してしまう。
* じっとしていられないような気分になる。
* 静かに遊びや余暇活動に取り組むことが難しい。
* 勢いよく行動し続ける、じっとしていると落ち着かない。
* しゃべりすぎることが多い。
* 相手の話が終わる前に話し始めてしまう、相手の言葉を先取りして話してしまう。
* 他の人の活動を遮って邪魔をしてしまう。
■発現時期・場面: 上記の症状が12歳以前から見られる。 症状が複数の場面(家庭・学校・職場など)で見られる。
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